「マルタ 就職」で検索している人の多くは、留学のその先——本当にこの島で働けるのか、日本人向けの求人はあるのか、ビザはどう取ればいいのかを知りたいはずだ。結論から言うと、マルタでの就職は可能だが、EU圏外の国籍である以上、単一許可(Single Permit)という在留・就労の仕組みを避けて通れない。ただし日本国籍には2026年からワーキングホリデーという別ルートも用意されている。この記事では、働くための3つのルート、実際に求人がある業界、日本語を使う仕事の限界、そして給与水準の見方までを、Identità(マルタの移民・身分証当局)とJobsplus(政府雇用局)の公式情報をもとに整理する。
マルタで働くルートは主に2つ。(1) 雇用オファーを得て雇用主がIdentitàに単一許可(Single Permit)を申請する方法。有効期間は6か月超で更新可能。(2) 18〜30歳の日本国籍者向けワーキングホリデー(最長1年、ビザ自体は無償だがVFSの手数料は別)。求人が比較的多いのはiGaming・IT・ホスピタリティ・多言語カスタマーサポート。給与は求人票に出にくく、業界内の相場感はマルタ在住者に聞くのが早い。
マルタで働く3つのルート
マルタはシェンゲン協定加盟国でEU加盟国だが、日本国籍はEU圏外(第三国民)にあたる。そのためEU/EEA国籍者のようにパスポート1枚で働き始めることはできない。現実的なルートは大きく2つに絞られる。ひとつは、マルタの企業から雇用オファーを得て、雇用主がIdentitàに単一許可(Single Permit)を申請する王道ルート。もうひとつは、2026年から始まった日本・マルタ間のワーキングホリデーを使い、まず現地で生活しながら仕事を探すルートだ。どちらも「制度は変わるため必ず公式で最終確認してください」という前提は変わらない。
| ルート | 対象 | 必要な許可 | 期間の目安 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 単一許可(Single Permit) | 雇用オファーのある第三国籍者 | 雇用主がIdentitàへ申請 | 6か月超・更新可 | Identità |
| ワーキングホリデー | 18〜30歳の日本国籍者 | ワーキングホリデービザ(無償+VFS手数料) | 最長1年 | Identità |
| 学生ビザのまま就労 | 語学留学中の学生 | 原則不可(切り替えが必要) | 該当なし | Identità |
単一許可(Single Permit)の仕組み
単一許可は、就労許可と在留許可をひとつにまとめた制度で、Identitàの公式ページには「third country nationals to legally reside and take up employment in Malta for a defined period of over 6 months which may be further renewed(第三国民がマルタで6か月を超える期間、合法的に居住し、指定された雇用に就くことを認め、更新も可能)」と説明されている。重要なのは、申請できるのは雇用主のみという点だ。third-country national本人が直接申請することはできず、マルタの雇用主が「特定の雇用を委ねる組織」としてオンラインポータルから代理申請する仕組みになっている。許可を得たあとも、指定された雇用主・職務以外で働くことはできない。法定の審査期間は4か月とされているが、実際の平均処理期間はおよそ2か月とされる。また2026年1月からは、単一許可を初めて申請する第三国民に対して、事前講習(Pre-Departure Course)の修了が求められる仕組みが導入されている。

ワーキングホリデーという選択肢
マルタと日本の間にはワーキングホリデー制度があり、これは韓国籍者には用意されていない、日本国籍者だけの選択肢だ。Identitàのワーキングホリデー(日本)ページには、対象年齢について「between eighteen (18) and thirty (30) years of age both inclusive at the time of application(申請時点で満18歳から30歳まで)」、滞在期間について「a period of up to one (1) year(最長1年間)」と明記されている。ビザそのものについては「the visa shall be issued free of charge by the Maltese competent authorities(ビザ自体はマルタ当局により無償で発給される)」とされる一方、「the applicant shall still be required to pay any service fees levied by the External Service Provider(外部サービス提供者=VFSが課すサービス手数料は別途必要)」と続けて説明されている。申請条件には、犯罪歴がないこと、滞在期間をカバーする医療保険への加入、往復航空券または相応の資金の保有なども含まれる。具体的な申請時期の目安や必要書類の言語指定はページごとに異なる可能性があるため、渡航を具体的に検討する段階で必ずIdentitàの該当ページを直接確認してほしい。ワーキングホリデー全体の制度概要はマルタ・ワーホリ完全ガイドで解説している。
実際に求人がある業界
マルタの求人市場は決して広くない。人口60万人に満たない島国という規模上の制約から、業界は偏っている。もっとも求人が出やすいのはiGaming(オンラインギャンブル関連企業)で、セント・ジュリアンズからパチェヴィルにかけてオペレーターやゲームスタジオのオフィスが集まっている。次いでITサポートやソフトウェア開発、通年で人手不足気味のホスピタリティ(ホテル・レストラン)が続く。これらの業種の給与相場や求人の広がりについてはマルタ移住・就職ガイドで詳しく扱っているので、業界横断で相場を見たい場合はそちらを参照してほしい。単一許可の取得手順そのものをさらに詳しく知りたい場合はマルタ就労ビザ・シングルパーミット手順の記事も参考になる。

日本語を使う仕事の範囲と限界
「日本人向けの求人はあるか」という問いには、正直に答える必要がある。日本語を母語とする話者はマルタでは希少なため、多言語カスタマーサポートの求人票に日本語が条件として挙がることはあるが、その数自体は英語のみの求人と比べて圧倒的に少ない。日本語だけで完結する仕事はほぼ存在せず、業務の大半は英語で行われることを前提に考えたほうがいい。「日本人でも簡単に就職できます」という言い方は実態に即していない。求人票に記載された英語力の条件を自分の実力と照らし合わせながら、英語力そのものを並行して伸ばす計画を持つことが、日本語需要をあてにするより現実的だ。語学学校の講師やスタッフとして働く場合の条件はマルタの語学学校で働く条件の記事で別に整理している。
求人の探し方
公式の求人検索窓口はJobsplusで、マルタ政府が運営する公共職業安定所にあたる。求人検索データベースに加えて、雇用統計や求職者向けの研修情報も公開されている。ここでは職業紹介会社の推薦は行わないが、民間の求人サイトやLinkedInでの直接応募も一般的な経路だ。応募前には、求人票に記載された英語レベルの条件を必ず確認し、自分の実力とのギャップを把握しておくと無駄な応募を減らせる。
給与水準の見方
求人票に給与額が明記されていないケースは珍しくない。特にiGaming業界では、面接まで金額が示されないことが多い。まず参考にすべきは、マルタの法定最低賃金の記事だ。法定の下限を土台にして、自分が検討している職種の求人票に出てくる範囲がその上のどのあたりに位置するかを見極めるほうが、単発の噂話よりずっと確実だ。現地で実際に働きながら暮らしている感覚——たとえば「その給与水準でマルタの生活費と釣り合うのか」といった肌感覚は、統計だけでは見えてこない。スウィーイ(Swieqi)でIT関係の仕事をしながら3年ほど暮らしているエマ(Emma、Instagram @jecrs687)は、求人票には出てこない業界の空気感や生活実感を日々のストーリーズで発信しているので、フォローしておくと参考になる。エマは求人紹介や仲介は行っていない点は理解しておいてほしい。
応募から着任までの流れ
一般的な流れは、(1) 求人へ応募し面接を受ける、(2) 内定後に雇用主がIdentitàへ単一許可を申請する、(3) 初回申請者は事前講習(Pre-Departure Course)を修了する、(4) 許可が下り次第マルタへ入国し勤務を開始する、という順序になる。単一許可の法定審査期間は4か月とされるが、実際の平均処理期間はおよそ2か月とされているため、内定から着任までは数か月単位で見込んでおく必要がある。ワーキングホリデーの場合は、先に自分でビザを取得してから現地で職探しをする形になり、順序が逆になる点に注意したい。
公式確認先
就労ビザ・在留資格に関する最終判断は、必ず公式サイトで行ってほしい。単一許可とワーキングホリデーの制度詳細はIdentità、求人検索と雇用統計はJobsplus、渡航前後の安全情報は外務省海外安全ホームページで確認できる。在マルタ日本国大使館のウェブサイトは本稿の確認時点でアクセスできなかったため、大使館名の記載にとどめ、リンクは付けていない。この記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではない。
主な出典
最終確認: 2026-09-21
よくある質問
マルタで就職できますか?
可能だが、日本国籍はEU圏外にあたるため、雇用主が申請する単一許可(Single Permit)か、18〜30歳ならワーキングホリデーのいずれかのルートが必要になる。パスポート1枚ですぐ働けるわけではない。
日本人向けの求人はありますか?
日本語が条件になる多言語カスタマーサポートの求人は存在するが、数は英語のみの求人に比べて少ない。日本語だけで完結する仕事はほぼなく、業務の大半は英語が前提になる。
就労ビザはどう取りますか?
雇用オファーを得たあと、本人ではなく雇用主がIdentitàへ単一許可(Single Permit)をオンラインで申請する。初回申請者は事前講習の修了も必要。必ずIdentità公式サイトで最新の要件を確認すること。
ワーホリで働けますか?
18〜30歳の日本国籍者であれば、最長1年のワーキングホリデービザで滞在しながら現地で職を探すことができる。ビザ自体は無償だが、VFSのサービス手数料は別途かかる。
給料はどれくらいですか?
求人票に金額が明記されないことも多い。まずはマルタの法定最低賃金を土台にして、検討している職種の相場感をつかむのが現実的だ。
英語力はどれくらい必要ですか?
求人票ごとに条件は異なるが、英語での業務遂行が前提になる求人が大半だ。日本語需要をあてにするより、応募前に求人票の英語力要件と自分の実力とのギャップを確認しておくほうが現実的だ。
求人はどこで探せますか?
マルタ政府の公式雇用局Jobsplusが求人検索と雇用統計を公開している。民間の求人サイトやLinkedInでの直接応募も一般的な経路だ。
求人票に出ない実情はエマに聞いてみよう
統計や制度の話はここまで。実際にスウィーイ(Swieqi)でIT関係の仕事をしながら3年ほどマルタで暮らしているエマ(Emma)なら、求人票には出てこない現地の働き方や生活の肌感覚を教えてくれる。エマは求人紹介やビザ手続きの代行は行っていないので、あくまで「暮らしのリアル」を聞く相手として気軽にDMしてみてほしい。
アイキャッチ写真: Christian Camenzuli / Wikimedia Commons · CC BY-SA 4.0



